## アーレントの全体主義の起源と時間
全体主義運動における時間の経験
ハンナ・アーレントは、その主著『全体主義の起源』の中で、全体主義運動の特徴の一つとして、それらが人々の時間経験を根本的に変容させてしまうことを指摘しています。 アーレントによれば、全体主義運動は、人々の過去・現在・未来に対する感覚を歪め、操作することによって、大衆を支配下に置こうとします。
歴史の歪曲と過去からの断絶
アーレントは、全体主義運動が歴史を歪曲し、操作することにより、人々の過去に対する感覚を破壊すると主張します。 全体主義のプロパガンダは、歴史的事実を無視あるいは改竄し、都合の良いように解釈された歴史観を大衆に押し付けます。 このような歴史の歪曲は、人々のアイデンティティの根幹を揺るがし、過去との連続性を断ち切ることで、体制への批判的な思考を阻害します。
予測 불가능な恐怖に支配された現在
全体主義体制下では、人々は常に予測不可能な恐怖にさらされています。 秘密警察による恣意的な逮捕、密告の横行、絶え間ないプロパガンダなどにより、人々は現在の生活に安心や安定を見出すことができません。 このような状況下では、人々は長期的な展望を持つことができず、ただ目の前の恐怖をやり過ごすことに精一杯になってしまいます。
ユートピアの約束と未来の抹消
全体主義運動は、しばしばユートピア的な未来像を提示することで、大衆の支持を集めようとします。 しかし、アーレントによれば、全体主義のユートピアは、現実の社会とはかけ離れた空虚な幻想に過ぎません。 全体主義運動は、ユートピアを実現するために、あらゆる手段を正当化し、人々の自由や権利を犠牲にします。 その結果、人々は未来に対する希望を失い、全体主義運動の描くユートピアは、個人の自由を抹消する全体主義体制の完成という、ディストピア的な未来へと繋がっていきます。