アリストテレスの詩学の美
アリストテレスの美学の中心概念：模倣（ミメーシス）
アリストテレスは、芸術の本質を「模倣」という概念で捉えました。彼の主張によれば、詩や演劇、音楽といった芸術作品は、現実の世界を単に模倣するのではなく、その背後にある普遍的な法則や理想的な姿を表現するものです。
悲劇における美：恐怖と憐憫による浄化（カタルシス）
アリストテレスは、悲劇を「悲劇的英雄の破滅を通して、観客に恐怖と憐憫の感情を喚起し、それらの感情を浄化する働きを持つもの」と定義しました。彼が「浄化」と呼ぶプロセスは、観客が劇中の登場人物たちに感情移入し、彼らとともに喜び、悲しむことを通して、自身の内面に抱える感情を解放し、精神的なバランスを取り戻すことを意味します。
美的要素としてのプロット：構成と認識
アリストテレスは、悲劇において重要な要素として「プロット」を挙げ、その構成方法について詳細に論じています。彼は、優れたプロットは単なる出来事の羅列ではなく、必然性と蓋然性に基づいた因果関係によって構成され、観客に驚きと感動を与えるサスペンスや意外性を備えている必要があると主張しました。また、プロットは登場人物の認識の変化（アナグノーリシス）や逆転（ペリペテイア）といった要素を含むことで、より深い感動を与えることができると述べています。
登場人物の重要性：適切さと一貫性
アリストテレスは、悲劇の登場人物は「適切であること」が重要であると述べています。これは、登場人物の性格や行動が、その社会的な立場や身分、性別、年齢などにふさわしいものであるべきことを意味します。また、登場人物は物語を通して一貫した性格や行動原理を持つ必要があり、唐突な変化や矛盾した言動は避けるべきであると主張しました。
様式：明確さと適切さ
アリストテレスは、詩作における言語表現の重要性を認識し、「明確さ」と「適切さ」を重視しました。彼は、詩の言語は理解しやすく、かつ、登場人物の性格や場面の雰囲気に合ったものであるべきだと述べています。また、比喩や韻律などの修辞技法を効果的に用いることで、詩作品はより美しく、感動的なものになると主張しました。