アリストテレスの詩学の位置づけ
西洋における詩学・文芸論の基礎
「詩学」は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスによって書かれた、西洋最古の詩学・文芸論書の一つです。 この書は、古代ギリシャの演劇、特に悲劇を主な対象としつつ、叙事詩や音楽など他の芸術にも言及しながら、 詩作一般の原理を体系的に論じたものです。 アリストテレスは、プラトンの弟子でありながら、 師とは異なる立場から芸術を擁護し、 その本質や効果、 そして制作の方法を分析しました。
構成と内容
「詩学」は、断片的に現存するのみで、 完全な形では伝わっていません。 現存する部分は、主に悲劇を扱った部分と、 叙事詩の一部を扱った部分からなります。 悲劇論では、 その構成要素として、 筋、 性格、 思想、 言葉遣い、 視覚的効果、 音楽を挙げ、 それぞれについて詳細に分析しています。 特に重要な概念として、 「ミメーシス」(模倣)や「カタルシス」(浄化)を挙げ、 悲劇が人間の普遍的な感情や行動を模倣することで、 観客に恐怖や憐れみといった感情を体験させ、 それらを浄化させる効果を持つと論じています。
歴史的な影響
「詩学」は、 古代ローマ時代から現代に至るまで、 西洋の詩学・文芸論に多大な影響を与えてきました。 特に、 ルネサンス期以降、 古代ギリシャ・ローマ文化への関心の高まりとともに、 その権威は絶対的なものとなり、 18世紀後半まで、 ヨーロッパの演劇は、 「詩学」の規則に従って創作されることがほとんどでした。 「詩学」は、 単なる古典作品ではなく、 時代を超えて読み継がれ、 解釈され、 その都度新たな意味を見出されてきた、 生きたテキストと言えるでしょう。
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