アリストテレスの詩学に影響を与えた本
プラトンの対話編
アリストテレスの『詩学』は、西洋の文芸批評の基礎を築いた、影響力のある作品です。紀元前4世紀に書かれたこの作品は、悲劇、叙事詩、喜劇などの劇的詩の性質を探求し、文学作品の構成要素、目的、感情的影響について分析しています。アリストテレスは『詩学』の中で、自分の師であるプラトンと彼の哲学的思想、特に『対話編』に示されている見解と深く関わっています。プラトンの思想はアリストテレス自身の美的理論を形作る上で重要な役割を果たしており、『詩学』の議論の多くは、プラトンの主張と関わるものとして理解することができます。
プラトンの『対話編』は、ソクラテスを含む様々な人物の間で行われた一連の哲学的対話です。芸術と詩の性質は、『対話編』のいたるところで繰り返されるテーマであり、プラトンはこれらの主題について複雑でしばしば批判的な見方を示しています。プラトンにとって、芸術は現実世界の模倣、あるいは「ミメーシス」です。彼は、物理的な世界自体がイデア、あるいは永遠で不変の形の不完全な反映であると主張しました。画家や詩人によって制作された芸術作品は、真実からさらに遠ざかった、現実の模倣の模倣です。
プラトンは『国家』で最も顕著に見られるように、芸術の真実からの距離について懸念を表明し、それが観客に感情的な混乱を引き起こし、理性と知恵を損なう可能性があると主張しています。彼は、芸術が理性よりも感情に訴えかける能力があり、道徳的に腐敗し、不安定な行動につながる可能性があると信じていました。たとえば、悲劇は観客に恐怖や哀れみなどの感情を抱かせると主張されましたが、プラトンはこれらの感情を抑え、理性と自制を育むことが不可欠であると考えました。
アリストテレスはプラトンの弟子であり、彼の作品の多くは彼の師の見解に対する直接的な反応として読むことができます。『詩学』の中でアリストテレスは芸術の模倣的な性質を認識していますが、彼はプラトンとは異なり、それが必ずしも悪いことではないと考えています。アリストテレスは、芸術は現実世界の模倣を提供することができますが、それはまた、普遍的な真理や人間の状況についての洞察を提供することもできると主張しています。彼は芸術がカタルシス、つまり恐怖や哀れみなどの感情の浄化または感情的な解放を提供できると信じていました。アリストテレスによれば、これらの感情を芸術作品を通して体験することは、観客が自分の感情を浄化し、感情的なバランスを回復することを可能にすることができます。
さらに、アリストテレスは『詩学』の中で、プラトンの詩に対する反対意見の1つである、それが不道徳で人々を堕落させる可能性があることに対処しています。アリストテレスは、芸術は確かに感情に訴えかけることができますが、その影響は必ずしも負であるとは限りませんと主張しています。彼は、芸術は、勇気、正義、知恵などの重要な道徳的価値観を促進する手段になる可能性があると信じていました。効果的な悲劇は、観客に、主人公の欠点から学ぶことができ、それによって彼らの道徳的性格を向上させることができます。
プラトンの影響はアリストテレスの『詩学』全体に見られますが、2人の哲学者の間には重要な違いがあることも明らかです。プラトンは芸術の感情的な力と潜在的な危険性について懸念を表明していましたが、アリストテレスは芸術が感情的および知的成長にプラスの影響を与えることができると信じていました。アリストテレスの美的理論は、彼の師の思想との関わり合いによって形作られ、彼自身の独特の芸術観を発展させました。