## アリストテレスの詩学と言語
###
模倣
アリストテレスは『詩学』において、詩を「模倣（ミメーシス）」という概念を通して捉えています。人間は生まれながらにして模倣を好むという性向を持ち、詩をはじめとする様々な芸術は、この模倣衝動を根源としていると彼は考えました。詩は現実をありのままに写し取るのではなく、言葉を通じて、ある特定の視点や解釈に基づいた「現実の模倣」を創造する行為です。
###
言語とリズム
アリストテレスは、詩における言語の重要性を認識していました。彼は、詩の言語が日常言語とは異なる、特別なものであることを指摘します。詩の言語は、リズム、韻律、比喩などの修辞技法を用いることで、聴覚的な美しさや感情的な深みを表現します。
『詩学』の中で、アリストテレスは詩の韻律について詳細に論じています。彼は、叙事詩に適した六歩格や、悲劇に適した揚歩格など、詩の種類に応じて適切な韻律があると主張しました。また、比喩は単なる言葉の装飾ではなく、事物の類似性を明らかにすることで、認識を深め、表現を豊かにする効果を持つと述べています。
###
悲劇における言語
アリストテレスは悲劇における言語についても考察しています。悲劇は、登場人物の行為を通して、人間の普遍的な感情や運命を描写するものであり、その効果を高めるためには、登場人物の性格や状況に応じた適切な言葉遣いが求められます。
彼は、悲劇の登場人物の言葉遣いは、高尚すぎても卑俗すぎてもならず、品位と明晰さを備えたものであるべきだと主張します。また、比喩や隠喩などの修辞技法を効果的に用いることで、登場人物の心理や劇的な状況を鮮やかに表現できるとしました。