## アリストテレスの自然学の批評
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アリストテレス自然学の革新性と限界
アリストテレスの自然学は、西洋思想史において極めて重要な位置を占めています。彼は、自然界を体系的に観察し、その背後にある原理や原因を論理的に説明しようと試みた最初の哲学者の一人でした。彼の自然学は、中世からルネサンス期にかけて、ヨーロッパの学問界に多大な影響を与え、自然科学の基礎を築いたと評価されています。
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経験に基づく観察と論理的推論
アリストテレスは、自然界を理解するためには、まず注意深い観察が不可欠であると強調しました。彼は、動植物の形態、習性、生殖などを詳細に記録し、その膨大な観察記録に基づいて、自然現象を説明するための理論を構築しました。例えば、彼は、物体が落下するのは、その物体が本来の位置である「下方」を目指しているためだと説明しました。
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現代科学との相違点
しかし、アリストテレスの自然学は、今日の科学的視点から見ると、いくつかの点で限界があります。例えば、彼は、実験的手法を用いず、もっぱら観察と論理的推論に頼っていました。そのため、彼の理論の中には、現代科学の知見と矛盾するものも少なくありません。例えば、落下運動に関する彼の説明は、ガリレオ・ガリレイの実験によって否定されました。
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質料と形相、目的論的な自然観
アリストテレスは、自然界のあらゆるものは、「質料」と「形相」から成り立っていると考えました。「質料」は、物体を構成する素材であり、「形相」は、その物体に特定の形や機能を与えるものです。また、彼は、自然界には目的が内在していると主張し、あらゆるものは、その目的を実現するために運動すると考えました。この目的論的な自然観は、現代科学では否定されています。