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アリストテレスの弁論術の構成

## アリストテレスの弁論術の構成

### 1. 弁論術の定義と種類

アリストテレスはまず、弁論術を「あらゆる事柄について可能な限りの説得の手段を見出す能力」と定義します。 そして、弁論をその目的と聴衆によって三種類に分類します。

* **政治弁論:** 未来における行動の是非を論じるもの。政治家や市民が、議会などで行う演説が該当します。
* **司法弁論:** 過去の行動の是非を論じるもの。法廷における原告や被告の弁論が該当します。
* **儀式的弁論:** 現時点における人物や事物の称揚または非難を行うもの。結婚式や葬式におけるスピーチなどが該当します。

### 2. 説得の手段: ロゴス、パトス、エトス

アリストテレスは、説得には三つの手段、すなわちロゴス、パトス、エトスがあると述べています。

* **ロゴス(logos):** 論理的証明。論理や証拠を用いて、主張の正しさを示すことを指します。
* **パトス(pathos):** 情動への訴えかけ。聴衆の感情を揺り動かすことで、共感や納得を得ることを指します。
* **エトス(ethos):** 話し手の性格。話し手自身の信頼性や人格によって、聴衆を説得することを指します。

### 3. 弁論の構成要素

アリストテレスは、効果的な弁論には四つの構成要素が必要であると述べています。

* **序論(prooimion):** 聴衆の注意を引き、主題に対する関心を高める部分。
* **物語(diegesis):** 事件や問題の背景を説明し、論点を明確にする部分。
* **証明(pistis):** 主張を裏付ける証拠や論理を提示し、聴衆を説得する部分。
* **結論(epilogos):** 議論を要約し、聴衆に強い印象を与える部分。

### 4. 個別論点の分析: 各弁論における論証方法

アリストテレスは、政治弁論、司法弁論、儀式的弁論のそれぞれについて、具体的な論証方法や注意点などを詳細に論じています。

例えば、政治弁論においては、幸福、正義、法律などに関する一般的な論証方法や、財政、戦争と平和、国防など具体的な政策分野における論証方法について解説しています。 また、司法弁論においては、過去の事実を証明するための証拠の種類や、原告・被告それぞれの立場からの論証方法について解説しています。 儀式的弁論においては、称賛や非難に値する人物や事物の特性や、効果的な表現方法について解説しています。

### 5. 表現技法: 明晰性、適切性、装飾

アリストテレスは、弁論の効果を高めるためには、内容だけでなく表現技法も重要であると述べています。 そして、優れた表現には、明晰性、適切性、装飾の三つの要素が必要であると説いています。

* **明晰性(clarity):** 分かりやすい言葉遣いで、論旨を明確に伝えること。
* **適切性(propriety):** 聴衆や状況に合わせた言葉遣いをし、不快感を与えないこと。
* **装飾(ornamentation):** 比喩や韻律などを用いて、表現に美しさや力強さを与えること。

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