## アリストテレスの弁論術に匹敵する本
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キケロ「弁論家について」
古代ローマの政治家、哲学者、そして雄弁家として知られるマルクス・トゥッリウス・キケロは、弁論術に関する重要な著作を数多く残しました。中でも「弁論家について」(De Oratore) は、アリストテレスの「弁論術」と並んで西洋古典古代における弁論術の傑作と称されています。
本書は、紀元前55年に執筆された対話篇という形式をとっており、紀元前91年にローマで実際に起こった出来事を舞台に、当時のローマを代表する弁論家たちによる弁論術についての議論が展開されます。
キケロは、本書の中で、理想的な弁論家像として、幅広い教養と倫理観、そして卓越した弁論術を兼ね備えた人物像を提示しています。 また、弁論術を構成する要素として、発想(inventio)、構成(dispositio)、文体(elocutio)、記憶(memoria)、伝達(pronuntiatio) の五つを挙げ、それぞれの要素について詳細に論じています。
「弁論家について」は、古代ローマにおける弁論術の理論と実践を理解する上で欠かせないだけでなく、現代においても、人前で話すスキルや説得力を高めたいと考える人々にとって、多くの示唆を与えてくれる古典的名著と言えるでしょう。