## アリストテレスの天体論に影響を与えた本
###
プラトンの『ティマイオス』
アリストテレスの天体論に影響を与えた書物として、プラトンの対話篇『ティマイオス』が挙げられます。この作品は、宇宙の創造、天体の構造と運動、そして宇宙における秩序と美について、プラトンの哲学的洞察が展開されています。アリストテレスはプラトンの弟子であり、師の思想から多大な影響を受けていました。『ティマイオス』における宇宙観は、アリストテレス自身の天体論を形成する上で重要な役割を果たしたと考えられています。
『ティマイオス』では、創造主であるデミウルゴスが、永遠で不変のイデアを模倣して、感覚的に知覚できる物質世界を創造したとされます。 デミウルゴスは、宇宙を完全な形である球形に創造し、その中心に地球を置きました。 そして、太陽、月、惑星、恒星といった天体を、地球の周りを異なる速度で円運動するように配置しました。 これらの天体は、エーテルと呼ばれる純粋で不変な第五元素で構成されており、永遠に円運動を続けるとされました。
プラトンの宇宙観は、アリストテレスの天体論にいくつかの重要な影響を与えました。例えば、アリストテレスもまた、宇宙は有限であり、地球を中心とした球形であるという考えを受け継ぎました。 また、天体はエーテルで構成されており、完全な円運動を行うという考え方も、プラトンから受け継いだものです。 しかし、アリストテレスはプラトンの天体論をそのまま受け入れたわけではありませんでした。 例えば、アリストテレスは、プラトンが唱えたデミウルゴスによる宇宙の創造という考えを批判し、宇宙は永遠に存在すると主張しました。
このように、『ティマイオス』は、アリストテレスの天体論に多大な影響を与えた重要な書物と言えます。アリストテレスは、プラトンの思想を批判的に継承しつつ、独自の天体論を構築していったのです。