## アリストテレスの動物誌に匹敵する本
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博物誌
ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(大プリニウス)によって西暦77年頃に著された「博物誌」は、古代ローマにおける百科全書的な知識を網羅した書物です。全37巻にわたり、宇宙、地理、動植物、鉱物、医学、芸術など、多岐にわたる分野を扱っています。
プリニウスは、当時の既存の文献を2000冊以上も参照し、独自の観察や経験も交えながら、膨大な情報を集積しました。その中には、事実とともに、伝説や迷信も含まれており、現代の科学的な視点からは正確ではない記述も少なくありません。
しかしながら、「博物誌」は古代ローマ人の自然観や知識体系を理解する上で貴重な資料であるとともに、その後のヨーロッパにおける自然科学の発展にも大きな影響を与えました。ルネサンス期には、写本や印刷物を通して広く読まれ、多くの学者や芸術家にインスピレーションを与えました。
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動物の発生
ウィリアム・ハーベイによって1651年に出版された「動物の発生」は、近代発生学の礎を築いた記念碑的な著作です。ハーベイは、ニワトリの卵を用いた詳細な観察と実験を通して、動物の発生過程を体系的に解明しようと試みました。
彼は、アリストテレスが提唱した「エピジェネシス」(後成説)の考え方を否定し、「プレフォーメーション」(前成説)の立場から発生現象を説明しようとしました。プレフォーメーションとは、卵や精子の中にすでに成体の微小な模型が存在し、それが成長して個体になるとする説です。
ハーベイの観察と考察は、後の顕微鏡技術の発展によって修正を余儀なくされましたが、発生学という新しい学問分野を切り拓いた功績は大きく評価されています。