## アリストテレスのニコマコス倫理学の感性
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感性とは何か
アリストテレスにとって、感性(aisthēsis)とは、外的な対象物が感覚器官に与える作用によって生じる能力のことです。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感がこれに当たります。動物はすべて、この感性を生まれながらに持っているとされます。
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感性の役割
感性は、外界から情報を得るための最初の窓口です。私たちは、感性を通して、色、音、匂い、味、温度などの感覚的性質を知覚します。アリストテレスは、感性がなければ、思考や知識を得ることは不可能だと考えていました。なぜなら、あらゆる思考や知識は、最終的には感性的な経験に基礎を置くからです。
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感性と知性
感性は、単に受動的に外界からの刺激を受け取るだけの能力ではありません。アリストテレスは、感性には、ある種の「識別能力」(krinein)があると主張します。例えば、私たちは、目を開けただけで、目の前にあるものが何であるかをある程度判断できます。これは、感性が、単に感覚データを受け取るだけでなく、それをある程度解釈する能力を持っていることを示唆しています。
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感性と倫理
感性は、倫理的な観点からも重要です。アリストテレスは、快楽と苦痛が、感性と密接に関係していると指摘します。私たちは、心地よい音や美しい景色を見ると快楽を感じ、不快な音や醜い景色を見ると苦痛を感じます。そして、この快楽と苦痛に対する感受性が、私たちの行動に大きな影響を与えます。
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感性の限界
感性は、外界についての情報を提供してくれる重要な能力ですが、限界もあります。感性は、個別の具体的なものにのみ向けられ、普遍的なものや抽象的なものを把握することはできません。また、感性は、時に錯覚を起こし、誤った情報を伝達することがあります。