## アリストテレスのニコマコス倫理学と時間
###
時間と幸福
アリストテレスは、ニコマコス倫理学において時間を幸福との関連で論じています。彼は、幸福（エゥダイモニア）を人間の活動の究極的な目的と捉え、それは魂の能力に従って生きることで達成されるとしました。そして、この幸福な状態は、一時的なものではなく、ある程度の「期間」持続される必要があると主張しました。
アリストテレスは、一瞬の快楽や一時的な成功は、真の幸福と見なされないと考えました。なぜなら、それらは持続性がなく、人間の生活全体を貫くものではないからです。真の幸福は、徳に基づいた理性的な活動を通して得られるものであり、それは時間をかけて培われ、生涯にわたって持続されるものです。
###
時間と徳
アリストテレスは、徳を習慣によって形成されるものと考えました。徳は、生まれつき備わっているものではなく、時間をかけて繰り返し virtuous な行為を行うことによって身につくものです。彼は、このプロセスを「習慣化」と呼び、徳を形成する上で重要な要素としています。
例えば、勇気は、危険な状況においても理性的に判断し、行動することで培われます。最初は恐怖を感じるかもしれませんが、繰り返しその状況に身を置くことで、恐怖を克服し、勇敢に行動できるようになるのです。このように、徳は、時間をかけて努力を続けることで獲得できるものなのです。
###
時間と実践知
アリストテレスは、倫理的な判断において重要な役割を果たす知性として「実践知」を提唱しました。実践知は、具体的な状況において、最善の行動を選択する能力であり、経験を通して時間をかけて養われます。
彼は、倫理的な判断は、単に規則や知識を適用すれば良いというものではなく、状況に応じて適切な判断を下す必要があると主張しました。実践知は、過去の経験から学び、未来を見据えながら、現在において最善の行動を選択する能力であり、時間との密接な関係を持っています。