アランの幸福論の表象
意志による情念の克服
アランの幸福論において中心的な位置を占めるのが、「意志による情念の克服」という考え方です。アランは、人間を不幸にするものは外的な要因ではなく、私たち自身の内面に宿る「情念」であると捉えます。
情念とは、怒り、不安、嫉妬、憎しみといった、私たちの心を乱し、冷静な判断を阻害する心の動きを指します。これらの情念に支配されると、私たちは自身の感情に振り回され、真の幸福から遠ざかってしまうとアランは考えます。
では、どのようにすれば情念に打ち勝ち、幸福を掴むことができるのでしょうか。アランはその鍵を「意志」に求めました。意志とは、情念に流されることなく、自らの理性と判断に基づいて行動する力を意味します。
アランは、私たち人間には誰しもこの「意志」が備わっていると説きます。情念に打ち勝ち、幸福な人生を送るためには、この意志の力を自覚し、鍛錬することが重要なのです。
具体的な実践としての習慣
アランは、意志を鍛え、情念を克服するための具体的な方法として、「習慣」の重要性を強調します。習慣とは、毎日繰り返し行うことで、無意識のうちに特定の行動をとることができるようになる心のメカニズムです。
アランは、この習慣の力を積極的に活用することで、意志を強化し、情念に打ち克つことができると考えました。例えば、早起きや規則正しい生活、運動といった習慣を身につけることは、心身を鍛え、情念に流されにくい強靭な精神を育むことに繋がります。
逆に、怠惰や不摂生といった悪習慣は、情念に支配されやすい心の状態を生み出してしまう要因となります。アランは、幸福を望むならば、自身の意志で積極的に良い習慣を身につけ、悪習慣を断ち切る努力をすべきだと説いています。