アポロドロスのギリシア神話の選択
アポロドロスのギリシア神話における選択
アポロドロスの『ビブリオテーケー』（図書館）は、紀元2世紀頃に編纂されたギリシア神話の集成です。現存する最古の神話集成の一つとして、ホメロスやヘシオドスの作品とは異なる系統の伝承を伝える貴重な資料となっています。
多様な伝承の選択と整理
アポロドロスは、膨大な量の詩や散文で語られてきた多様なギリシア神話を、体系的に整理し、一貫性のある物語として再構成しようと試みました。その過程で、彼は異なる伝承の中から特定のものを選択し、あるいは組み合わせる必要に迫られました。
例えば、彼はヘラクレスの12の功業について、伝承によって異なる順番や内容を比較検討し、最も一般的と思われるものを採用しています。また、オイディプスの物語では、ソポクレスの悲劇とは異なる結末を採用しています。
歴史的背景と編纂意図
アポロドロスの選択は、彼の生きた時代背景や編纂意図を反映していると考えられます。彼はローマ帝国の時代に活動しており、彼の作品はギリシア文化に関心を持つローマ人読者を意識していた可能性があります。
また、アポロドロスは、単に既存の神話を羅列するのではなく、ギリシア神話の全体像を簡潔かつ明快に伝えることを目指していたと考えられます。そのため、彼は物語の面白さや劇的な効果よりも、事実関係の正確さや体系的な整合性を重視したと考えられています。
選択の結果と影響
アポロドロスの選択は、後の時代のギリシア神話理解に大きな影響を与えました。彼の『ビブリオテーケー』は、中世からルネサンス期にかけて、ギリシア神話の主要な典拠の一つとして広く読まれ、絵画や彫刻など様々な芸術作品の題材となりました。
しかし、彼の選択が必ずしも原典に忠実であったり、学術的に正確であるとは限りません。彼の作品はあくまでも、特定の時代、特定の文化背景における、ギリシア神話の解釈の一つとして捉える必要があります。