## アポロドロスのギリシア神話の批評
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史料的価値
アポロドロスの『ギリシア神話』は、紀元2世紀頃に成立したと推定される、ギリシア神話の集成です。 現存する最古の神話集成ではありませんが、 ヘシオドスの『神統記』やホメーロスの叙事詩など、 より古い時代の文学作品を参照しており、 失われた文献の情報を伝える貴重な資料となっています。
例えば、『ギリシア神話』は、 トロイア戦争の原因となった「パリスの審判」について ヘシオドスの断片的な記述を補完する情報を提供しています。 また、 オイディプスの物語についても、 ソポクレスの悲劇では触れられていない オイディプスの晩年に関する伝承を伝えています。
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文学的評価
『ギリシア神話』は、 簡潔で淡々とした文体で書かれており、 文学作品というよりはむしろ、 百科事典のような概説書としての性格が強いと言えます。 そのため、 ホメーロスやヘシオドスのような 詩的な表現や登場人物の心理描写は ほとんど見られません。
一方で、 その簡潔な文体は、 膨大なギリシア神話を 体系的に理解する上で 役立つという側面もあります。 また、 『ギリシア神話』は、 後世の芸術家たちに 多くの題材を提供してきました。
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問題点
『ギリシア神話』は、 現存する写本が少なく、 一部が欠落しているため、 アポロドロスの記述の全てが そのまま信用できるわけではありません。 また、 複数の伝承が異なる場合は、 アポロドロス自身の解釈が 加えられている可能性もあります。
さらに、 『ギリシア神話』は、 あくまでアポロドロスが生きた時代の ギリシア神話の一つの解釈に過ぎません。 他の時代の、 あるいは他の地域のギリシア神話とは 異なる点も存在します。