## アウグスティヌスの神の国を読む
歴史的背景
「神の国」は、ローマ帝国の衰退期、特に西暦410年のローマ略奪を背景に書かれました。この出来事は、キリスト教徒を含むローマ市民に衝撃を与え、伝統的なローマの価値観とキリスト教の教えとの関係について疑問を投げかけました。アウグスティヌスは、キリスト教がローマの没落をもたらしたという非難に応えるため、歴史と人間の運命に対するキリスト教的な視点を提示しようと試みました。
二つの国
「神の国」の中心的なテーマは、地上の国と神の国という、二つの対照的な「国」の概念です。アウグスティヌスは、これらの国を地理的な場所としてではなく、人間の愛の対象に基づいた象徴的な実体として提示しています。
* **地上の国:** 現世的な快楽、権力、自己愛を追求する人々によって構成されています。この国は、アダムとイブの原罪によって特徴付けられ、罪と死の支配下にあります。
* **神の国:** 神への愛と隣人愛によって特徴付けられる人々によって構成されています。この国は、イエス・キリストの贖罪によって約束されており、永遠の平和と幸福を享受します。
歴史解釈
アウグスティヌスは、歴史を二つの国の間の闘争として解釈します。彼は、聖書の歴史とローマ帝国の歴史を分析し、神の摂理が人間の出来事を導いていることを示そうとします。彼の歴史観は線形で、創造から最後の審判へと向かう進歩的なプロセスとして理解されています。
哲学的影響
「神の国」は、プラトンや新プラトン主義などのギリシャ哲学の影響を強く受けています。特に、イデアの世界と感覚の世界の二元論は、アウグスティヌスの二つの国の概念に影響を与えていると考えられています。しかし、アウグスティヌスは、プラトンの哲学をキリスト教の教義と統合し、独自の思想体系を構築しています。
政治思想
「神の国」は、政治哲学の古典としても知られています。アウグスティヌスは、理想的なキリスト教国家の形態について明確なビジョンを提示しているわけではありませんが、国家の役割は、地上における秩序と正義を維持することによって、神の国の実現に間接的に貢献することであると主張しています。