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アウグスティヌスの神の国の思想的背景

## アウグスティヌスの神の国の思想的背景

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ローマ帝国の衰退とキリスト教

アウグスティヌスが「神の国」を著したのは、413年から426年にかけてのことですが、これはローマ帝国の衰退とキリスト教の隆盛という歴史的転換点と重なります。395年のテオドシウス1世の死後、ローマ帝国は東西に分裂し、西ローマ帝国はゲルマン民族の侵入に苦しめられていました。

特に、410年に西ゴート族によってローマが陥落した事件は、ローマ市民に大きな衝撃を与えました。伝統的なローマの多神教を信仰する人々は、キリスト教の普及がローマの衰退を招いたと非難しました。彼らは、ローマの繁栄はローマの神々への信仰によって守られてきたのであり、キリスト教がそれを否定したために神々の怒りを買い、ローマは滅亡の危機に瀕しているのだと主張したのです。

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異教徒の批判とアウグスティヌスの反論

アウグスティヌスは「神の国」を著すにあたって、こうした異教徒からの批判に反論することを目的の一つとしていました。彼は、ローマの衰退はキリスト教のせいではなく、むしろローマ人自身の道徳的堕落が原因であると主張しました。

アウグスティヌスは、ローマ帝国の歴史を振り返り、ローマ人が権力と栄光を追い求めるあまり、正義や道徳を軽視してきたことを指摘しました。そして、キリスト教はローマの道徳を堕落させたのではなく、むしろ堕落したローマ人を救済するために現れたのだと主張したのです。

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「神の国」と「地上の国」

アウグスティヌスは、歴史を「神の国」と「地上の国」という二つの対立する都市の闘争として解釈しました。「神の国」は、神を愛し、神の意志に従って生きる人々の共同体であり、「地上の国」は、自己愛と物質的な欲望に支配された人々の共同体です。

アウグスティヌスによれば、ローマ帝国を含むすべての人間の国家は、究極的には「地上の国」に属します。なぜなら、人間の国家は、たとえそれがキリスト教を国教としていようとも、完全な正義や永遠の幸福を実現することはできないからです。

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プラトン主義の影響

アウグスティヌスの思想には、古代ギリシャの哲学者プラトンの影響が色濃く見られます。特に、「神の国」と「地上の国」という二元論的な世界観は、プラトンのイデア論を基盤としています。

プラトンは、感覚的に認識できるこの世界は、真の実在であるイデアの世界の影に過ぎないと考えました。アウグスティヌスは、プラトンのイデア論をキリスト教的に解釈し、真の実在である神の国の影として、この世の国家や社会を位置づけました。

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