アウグスティヌスの告白を読む前に
西洋思想史上の記念碑的作品
『アウグスティヌスの告白』を読むことは、西洋思想史上の記念碑的作品に触れることと同義です。その影響は哲学、神学、文学、歴史など多岐にわたり、現代においても色褪せることなく輝きを放っています。しかし、いざ読み始めようとした時、その膨大な量と内容の深さに圧倒されてしまうかもしれません。そこで、この深遠な書物との出会いをより豊かなものとするために、事前に心に留めておきたい点がいくつかあります。
著者の生涯と時代背景への理解を深める
『告白』は、アウグスティヌス自身の半生を赤裸々に綴った自伝であり、同時に神への熱い信仰告白でもあります。彼の複雑な内面、葛藤、そして回心のドラマを深く理解するためには、著者の生涯と当時の時代背景についての知識を深めておくことが重要です。
アウグスティヌスは、ローマ帝国末期の北アフリカに生まれました。キリスト教が国教となる激動の時代を生き、彼自身も異教文化や様々な思想に影響を受けながら、苦悩の末にキリスト教へと回心した経験を持ちます。彼の生きた時代背景や文化、当時の宗教観などを知ることで、『告白』に描かれた心の軌跡をより鮮明に、そして立体的に捉えることができるでしょう。
多様な解釈が存在することを意識する
『告白』は、これまで多くの学者や思想家によって読み解かれ、解釈されてきました。それは、この作品が単なる個人的な記録を超えた、普遍的な人間存在の課題を提起しているからに他なりません。
読者一人ひとりが、自身の経験や価値観に基づいて自由に解釈できる余地が残されている点が、『告白』の魅力の一つと言えるでしょう。 先入観にとらわれず、自身の感性と理性をもってテキストと真摯に向き合うことで、新たな発見があるはずです。