## アウグスティヌスの告白の発想
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告白の対象
アウグスティヌスは『告白』の中で、神への祈りの形をとって、自らの半生を振り返り、述懐しています。
彼が告白の対象としているのは、大きく分けて二つあります。
* **神への罪の告白**: アウグスティヌスは、幼少期の盗み、青年期の肉欲の罪、マニ教に傾倒していたことなど、自らの犯してきた罪の数々を赤裸々に告白しています。
* **神の恩寵への感謝**: 自らの力では克服できなかった数々の罪を、神の導きによって克服し、真の神へと回心できたことに対する感謝の念が表明されています。
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告白の動機
アウグスティヌスは『告白』を執筆した動機を明確には記していません。しかし、本文の内容からいくつかの動機を読み取ることができます。
* **自己理解への欲求**: 自らの半生を振り返り、幼少期から神がどのように自らを導いてきたのかを理解しようとする意図がうかがえます。
* **異端反駁**: マニ教などの異端思想に陥っていた自らの過去を告白することで、当時の異端思想の誤りを明らかにしようとする意図が読み取れます。
* **教化**: 読者に対し、自らの経験を通して、神への信仰の大切さ、罪の深さ、神の恩寵の偉大さを伝えようとする意図が見て取れます。
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告白における時間
『告白』は、過去から現在、そして未来へと続く時間軸の中で語られています。
* **過去の告白**: 自らの半生を振り返り、過去の罪を告白することで、回心以前の自分と決別し、神の恩寵の大きさを示しています。
* **現在の告白**: 回心した現在の自分と神との関係性を語り、神への賛美と感謝の気持ちを表明しています。
* **未来への希望**: 永遠の命への希望を語り、神と共に過ごす未来への憧憬を表しています。
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告白の文体と表現
『告白』は、神への祈りという形式をとっており、全体的に詩的で情熱的な文体で書かれています。
* **神への呼びかけ**: 「あなた」という二人称で神に呼びかけ、対話形式で告白が進んでいく場面が多く見られます。
* **内省的な独白**: 自らの内面を深く見つめ、葛藤や苦悩を赤裸々に吐露する、内省的な独白も多く含まれています。
* **修辞技法の多用**: 比喩や隠喩、反復などの修辞技法を駆使し、自らの心情や神の偉大さを劇的に表現しています。
これらの要素が、『告白』を単なる回心記ではなく、哲学的、文学的にも優れた作品にしています。