アウグスティヌスの告白の技法
自伝的形式
本書はアウグスティヌス自身の回心体験、幼少期からキリスト教への改宗、そして司教となるまでの道のりを克明に綴った、西洋文学における最初の自伝作品として知られています。 彼は自らの罪深かった過去や内面の葛藤を赤裸々に告白することで、神の慈悲の偉大さを際立たせ、読者自身の魂の救済へと導こうと試みています。
内省と独白
アウグスティヌスは神の呼びかけに応じる形で自らの魂の内面に深く向き合い、過去を振り返りながら自己分析を行います。 その過程で彼は、肉体の欲望や物質的な快楽、世俗的な名誉への執着など、自らの内に潜む罪の根源を鋭く見つめ、神への愛と信仰によってのみ真の幸福に到達できることを悟っていきます。
対話形式
本書は、アウグスティヌスが神に向けて語りかけるという形式で書かれています。 これは、彼が神との対話を通して自身の信仰を深め、読者をその対話へと誘い込むための手法として用いられています。 神への問いかけとそれに対する自身の内面からの応答を通して、彼の信仰への道筋が鮮やかに浮かび上がってきます。
聖書の引用と解釈
アウグスティヌスは聖書を引用しながら自身の経験を解釈し、神の存在や救済の意義を論じていきます。 彼は聖書の言葉を単に引用するのではなく、自身の経験や思索と結びつけ、独自の解釈を加えることで、読者に深い示唆を与えています。 特に、時間論や創造論に関する考察は、後の西洋思想に大きな影響を与えました。