## アウグスティヌスの告白の思考の枠組み
###
時間と自己認識
アウグスティヌスは、時間を過去・現在・未来という人間の認識の枠組みで捉え、神の時間理解との違いを論じています。彼は、過去はもはや存在せず、未来はまだ来ていないため、現実に存在するのは「現在」のみだと考えます。しかし、現在という瞬間は常に移り変わるため、それを捉えることは困難です。そこで彼は、人間の意識の中にのみ過去・現在・未来を繋ぐ時間意識が存在すると説きます。
この時間論は、自己認識の問題とも深く関わっています。アウグスティヌスにとって、自己とは常に変化するものであり、過去の経験や未来への希望によって形成されるものだからです。彼は、自身の内面を深く見つめることで、過去から現在までの自己の変遷を辿り、その中で神の導きを探求しようと試みます。
###
神の恩寵と人間の自由意志
アウグスティヌスは、人間の救済は神の恩寵によってのみもたらされると信じていました。彼は、人間は原罪によって堕落しており、自力で神に近づくことはできないと主張します。しかし、一方で彼は、人間には自由意志が与えられており、神に従うか、背くかを選択する自由があると説きます。
この一見矛盾する二つの概念は、「告白」における重要なテーマとなっています。アウグスティヌスは自身の過去の罪を振り返り、自らの意志の弱さを告白します。しかし同時に、神が自身の心に働きかけ、回心へと導いてくれたことを確信しています。彼は、人間の自由意志と神の恩寵の関係を完全に解明することはできないとしつつも、両者が複雑に絡み合いながら人間の救済が実現すると考えました。
###
愛と欲求
「告白」において、アウグスティヌスは人間の様々な欲求について考察しています。彼は、人間の心は常に何かに渇望しており、真の幸福は永遠なるもの、すなわち神への愛によってのみ満たされると説きます。
アウグスティヌスは、自身の過去の経験を通して、物質的な快楽や名誉欲がもたらす幸福は一時的なものであり、真の満足には繋がらないことを痛感します。彼は、真の愛の対象は神であり、神を愛することによってのみ、人間は心の平安と永遠の命を得ることができると主張します。