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J・S・ミルの経済学原理と時間

## J・S・ミルの経済学原理と時間

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時間の概念

J・S・ミルの主著『経済学原理』において、時間は直接的に主要なテーマとして扱われていません。ミル自身も、当時の経済学の中心的な分析対象は富の生産と分配に関わる「静的な」側面であり、時間の経過に伴う変化や発展は別の研究領域に属すると考えていました。

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経済現象における時間

しかし、『経済学原理』の中には、時間という要素が様々な経済現象の分析に不可欠であることを示唆する記述が数多く見られます。

例えば、ミルは資本の蓄積過程を論じる際に、時間の経過が不可欠であることを指摘しています。貯蓄と投資を通じて資本が形成されるまでには時間を要し、その時間の経過が経済成長の速度に影響を与えるという点において、時間は重要な要素となります。

また、ミルは価値論においても時間の要素に言及しています。彼は、商品の価値は需要と供給によって決定されるとしますが、その需要と供給は、生産にかかる時間や消費者の時間選好など、時間的な要因に影響を受けることを認めています。

さらに、分配の分野においても、ミルの議論には時間的な側面が内包されています。彼は、利潤を資本家が時間とリスクを負担することへの報酬と捉えています。これは、生産活動には時間的な遅延が伴い、その間に不確実性が存在することを示唆しています。

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ミルの時間概念の限界

ミルの経済学における時間の扱いは、断片的なものであり、体系的な分析がなされているわけではありません。これは、彼が当時の主流経済学の枠組みの中で議論を進めていたこと、そして、時間という要素を本格的に分析する理論的な枠組みがまだ確立されていなかったことに起因すると考えられます。

しかし、『経済学原理』における時間に関する記述は、後の経済学者が時間の概念を経済学に取り入れる上で重要な示唆を与えました。その後、アルフレッド・マーシャルなどの経済学者によって、時間の概念は経済分析の中核に据えられるようになり、現代経済学においても不可欠な要素となっています。

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