説得のエリザベス・エリオットが抱く感情
ジェーン・オースティンの『説得』は、19世紀初頭のイギリス社会を舞台にした恋愛小説であり、登場人物の心情の描写において非常に洗練されています。この作品の中で、エリザベス・エリオットという人物は、主人公アン・エリオットの長姉として登場します。彼女の感情の動きは、表面的にはあまりドラマチックではないかもしれませんが、その内面には複雑な心理が隠されています。
プライドと虚栄心
エリザベス・エリオットの最も顕著な特徴は、彼女の強いプライドと虚栄心です。エリオット家の長女としての地位に安住し、社会的な地位や外見に対する過度なこだわりを持っています。これは、彼女が周囲の人々、特に社会的地位が低いと見なされる者たちに対して示す軽蔑の態度にも表れています。エリザベスのこのような性格は、彼女の感情がしばしば外見や他者の評価に左右されやすいことを示しています。
愛情の欠如と孤独
一方で、エリザベスの内面には愛情の欠如という深い孤独が存在します。彼女は家族の中で愛されることが少なく、特に父親からはあまり関心を寄せられていないように感じています。その結果、彼女のプライドは自己価値を保つための防衛機制として機能しており、その孤独感を紛らわせる手段となっています。しかし、その心の奥底では、他者との真の絆や愛情を渇望していることが窺えます。
変化への抵抗
エリザベスは変化に対して非常に抵抗があります。特に家族の財政状況が悪化し、身分相応の生活が維持できなくなるという変化は、彼女にとって大きな衝撃となります。彼女はこの変化を受け入れることができず、現状を保とうとする姿勢を強く示します。この変化への抵抗は、彼女の不安定な自己価値感と密接に関連しており、外部の評価によって自分の価値を測ろうとする彼女の心理が反映されています。
エリザベス・エリオットの感情は、プライドと虚栄心、愛情の欠如と孤独感、そして変化への抵抗という三つの主要な要素によって形成されています。これらの要素は彼女の行動や選択を動機づける重要な要因であり、『説得』の中で彼女がたどる心理的な旅路を理解する鍵となります。