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ヴォルテールの哲学書簡の対極

ヴォルテールの哲学書簡の対極

ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起源論』における自然状態と社会契約

ルソーの『人間不平等起源論』(1755年)は、理性と進歩を称揚した啓蒙主義の主流派、特にヴォルテールの『哲学書簡』(1734年)で提示された見解に対する、鋭い批判として位置づけられます。ルソーは、人間社会の進歩が、皮肉にも人間の堕落をもたらしたと主張し、理性や科学、芸術が人間の不平等と不幸を増大させたと論じました。

自然状態における人間の善性

ルソーは、人間は本来、自然状態においては自愛と憐憫の情によって導かれる善良な存在であったと主張します。自愛は自己保存の欲求であり、憐憫は他者の苦痛に共感する感情です。ルソーは、この自然状態の人間は、理性の発達した現代人よりもむしろ幸福であったと論じます。

社会形成と不平等の発生

ルソーによれば、人間は社会を形成し、所有の概念が生じたことから、自然状態は終わりを告げます。私有財産は、競争、嫉妬、不平等を生み出し、社会を腐敗させるとルソーは批判します。さらに、理性や言語の発達は、人間を自然状態から引き離し、虚偽や欺瞞に満ちた社会生活へと導いたと主張します。

社会契約論における一般意志

ルソーは、腐敗した社会から脱却し、人間の自由と平等を実現するために、新たな社会契約論を提示します。それは、個々人が自己の権利をすべて共同体に譲渡し、その共同体が体現する「一般意志」に従うというものです。一般意志は、個々の特殊意志の総和ではなく、共同体全体の共通善を目的とする普遍的な意志です。

ルソーとヴォルテールの対立

ルソーの思想は、理性を重視し、文明の進歩を信奉したヴォルテールとは対照的です。ヴォルテールは、ルソーの自然状態への回帰を否定し、理性と教育による社会の改善を訴えました。二人の思想的対立は、啓蒙主義における重要な論点を浮き彫りにしています。

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