## ヴォルテールのミクロメガスが扱う社会問題
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宗教と哲学
ミクロメガスでは、シリウス星人ミクロメガスと土星人サチュルヌスの旅を通して、様々な惑星の宗教や哲学に触れる場面が登場します。地球で出会った学者との対話を通じて、ヴォルテールは当時の地球社会における宗教的対立や不寛容さを風刺的に描いています。
例えば、ミクロメガスたちが驚いたことに、地球人は自分たちの宗教こそが唯一絶対の真実だと主張し、他の宗教を否定します。また、神の存在証明や三位一体論など、複雑で抽象的な議論に時間を費やす様子は、宇宙的な視点から見ると滑稽に映ります。
このような描写を通して、ヴォルテールは盲目的な信仰心や教条主義を批判し、理性に基づいた自由な思考の重要性を訴えていると言えるでしょう。
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戦争と暴力
ミクロメガスとサチュルヌスは、地球で戦争を目撃し、その愚かさに驚愕します。巨大な体を持つ彼らにとって、人間同士の争いはまるで蟻が争っているように映ります。
ヴォルテールは、戦争の原因が領土や資源の奪い合い、宗教の違い、権力者のエゴなど、些細なものであることを強調します。そして、戦争がもたらす悲惨な結果、すなわち、無数の死傷者、都市の破壊、経済の疲弊などを克明に描き出します。
戦争の描写を通して、ヴォルテールは人間の愚かさや残虐性を浮き彫りにすると同時に、平和の尊さ、理性に基づいた国際関係の構築の必要性を訴えています。
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社会的不平等
ミクロメガスは、地球社会における貧富の差や身分制度にも疑問を抱きます。権力者や富裕層は贅沢な暮らしをする一方で、庶民は貧困に苦しんでいる様子を目の当たりにします。
ヴォルテールは、当時のフランス社会における貴族制度や封建的な社会構造を批判的に捉えていました。彼は、すべての人間は平等に生まれ、自由と幸福を追求する権利を持つと考えていました。
ミクロメガスの視点を通して、ヴォルテールは社会的不平等や不条理を告発し、より公正で平等な社会の実現を訴えていると言えるでしょう。
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人間の傲慢さ
ミクロメガスは、地球人が自分たちを宇宙の中心だと考えていることに驚きます。地球人は、自分たちこそが神の最高傑作であり、他の惑星には生命は存在しないと信じて疑いません。
しかし、ミクロメガスやサチュルヌスとの出会いは、地球人がいかにちっぽけな存在であるかを思い知らせることになります。広大な宇宙には、地球よりもはるかに高度な文明を持つ惑星が存在する可能性も十分にあります。
ヴォルテールは、人間の傲慢さや自己中心的な世界観を批判し、謙虚さや相対的な視点の重要性を訴えています。宇宙的な視点を持つことで、人間は自分たちの限界を認識し、より広い視野で世界を捉えることができるようになるでしょう。