## ヴォルテールのザイールの周辺
ザイールの創作背景
ヴォルテールが『ザイール』を執筆したのは1730年から1731年にかけてのことである。当時、フランスでは古典主義が爛熟期を迎えていた。古典主義演劇は三単一の法則(時間の単一性、場所の単一性、 Handlungの単一性)を厳守し、高尚な文体で書かれることが求められた。悲劇は貴族階級の登場人物の恋愛や権力闘争を題材とすることが多く、教訓を含み、観客にカタルシスを与えることを目的としていた。
ザイールの特徴
『ザイール』は、エルサレムを舞台に、キリスト教徒の男性オロスマンとイスラム教徒の女性ザイールの悲恋を描いた悲劇である。作品は全5幕からなり、韻文で書かれている。
『ザイール』は古典主義悲劇の形式を踏襲しつつも、宗教的寛容、異文化理解といったテーマを扱っている点が特徴として挙げられる。
ヴォルテールは、この作品を通して、宗教の違いを超えた人間の普遍的な愛と苦悩を描こうとした。
ザイールの評価と影響
『ザイール』は初演当時から高い評価を受け、ヴォルテールの代表作の一つと見なされている。作品はその後も繰り返し上演され、複数の言語に翻訳された。
『ザイール』は、その後のフランス演劇に大きな影響を与えた。宗教的寛容というテーマは、啓蒙主義思想とも共鳴し、多くの作家に影響を与えた。また、異文化理解というテーマは、18世紀後半にフランスで流行したオリエンタリズムの先駆けとなったとも言われている。