ヴォルテールのカンディードを読む
サティーレと皮肉
「カンディード」は、ヴォルテールが風刺と皮肉を駆使して、当時の社会や哲学、宗教を批判した作品です。 登場人物や出来事は誇張され、皮肉な状況に置かれることで、読者は笑いを誘われると同時に、その背後にある問題点に気づかされます。 例えば、主人公カンディードの楽観主義は、様々な苦難に遭っても揺るがないほど極端なため、かえって滑稽に見え、盲目的な楽観主義への批判となっています。
楽観主義への批判
「カンディード」は、ライプニッツの唱えた「この世はあらゆる可能な世界の中で最善である」という楽観主義に対する痛烈な批判として知られています。 カンディードは、家庭教師パングロスからこの楽観主義を教え込まれ、どんな苦難に遭っても「すべては最善に向かっていく」と信じて疑いません。しかし、旅の中で戦争、災害、人間の残虐行為などを目の当たりにし、次第にその考えに疑問を抱くようになります。
宗教と哲学
「カンディード」では、宗教や哲学も風刺の対象となっています。 特に、カトリック教会の腐敗や偽善は、宗教裁判や修道院での出来事を通して描かれています。 カンディードは、善人であるにもかかわらず、宗教的な理由から迫害を受けたり、不条理な目に遭ったりします。 このような描写を通して、ヴォルテールは既存の宗教体制や教条主義的な考え方に疑問を投げかけています。
社会批判
「カンディード」は、当時の社会における様々な問題点も風刺しています。 貴族社会の腐敗、植民地支配の残虐性、貧富の格差、女性の社会的地位の低さなどが、物語の中で描かれています。 カンディードは旅をする中で、様々な階層の人々と出会い、社会の矛盾や不条理を目の当たりにします。
啓蒙主義思想
「カンディード」は、ヴォルテールの啓蒙主義思想が色濃く反映された作品です。 彼は、理性に基づいた思考と行動、個人の自由と幸福の追求、宗教的寛容、社会の進歩などを重視していました。 「カンディード」の中で、彼はこれらの思想を、風刺や皮肉を用いながら、読者に訴えかけています。