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ヴォルテールのカンディードから学ぶ時代性

## ヴォルテールのカンディードから学ぶ時代性

18世紀の社会と風刺

 ヴォルテールの『カンディード』は、18世紀ヨーロッパ社会の矛盾や不条理を痛烈に風刺した作品です。主人公カンディードの楽天的な思想「すべてはこの世で最善である」を逆手に取り、戦争、宗教、貴族社会など、当時の社会制度や価値観を鋭く批判しています。

楽観主義への批判

 当時のヨーロッパ思想界では、ライプニッツの唱えた「我々が住むこの世界は、あらゆる可能な世界の中で最善のものである」という楽観主義が主流でした。『カンディード』はこの思想を痛烈に皮肉り、現実の苦難や悲劇を描写することで、盲目的な楽観主義の危険性を浮き彫りにしています。

戦争の悲惨さ

 作中では、七年戦争やリスボン地震など、当時の社会を揺るがす出来事が描かれています。特に戦争の場面では、その残虐性や不条理さが克明に描写されており、戦争がもたらす悲惨さを訴えかけています。これは、啓蒙主義者であったヴォルテール自身の戦争に対する強い批判精神の表れとも言えます。

宗教的偽善への批判

 『カンディード』では、宗教界の腐敗や偽善も風刺の対象となっています。特に、宗教の名の下に行われる虐殺や迫害は、当時の宗教界に対するヴォルテールの強い批判を反映しています。当時のカトリック教会は絶対的な権力を持つ存在でしたが、ヴォルテールは宗教的寛容を訴え、教会の権力濫用を批判しました。

貴族社会の特権と腐敗

 カンディードは旅の途中で、様々な貴族や富裕層と出会います。彼らは特権的な立場にありながら、贅沢三昧にふけり、庶民を搾取しています。ヴォルテールは彼らの道徳的退廃を描き出すことで、当時の社会における不平等や不公正さを批判しました。

植民地主義への批判

 作中には、ヨーロッパ諸国による植民地支配や奴隷貿易の現実も描かれています。特に、エルドラドという理想郷との対比によって、ヨーロッパ社会の物質主義や貪欲さが浮き彫りにされています。これは、当時のヨーロッパ社会が抱えていた植民地主義の問題点を鋭く指摘していると言えるでしょう。

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