## ヴェブレンの企業の理論の発想
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従来の経済学への批判
ヴェブレンは、彼の生きた19世紀後半から20世紀初頭の経済学、特に古典派経済学やオーストリア学派が前提としていた「経済人は合理的な行動をとる」という考え方に根本的な疑問を抱いていました。彼は、現実の経済活動においては、人間の行動は必ずしも合理性によってのみ説明できるものではなく、むしろ非合理的な行動や社会的な要因が大きく影響していると主張しました。
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顕示的消費と有閑階級
ヴェブレンの理論の中核を成す概念が「顕示的消費」です。これは、人々が自分の経済力や社会的地位を周囲に誇示するために、高価な商品やサービスを消費することを指します。ヴェブレンは、このような消費行動は、特に「有閑階級」と呼ばれる、生産活動に従事せず、財産や資産によって生活する階層において顕著に見られると指摘しました。
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企業の行動原理
ヴェブレンは、企業もまた、この「顕示的消費」を促すような行動をとると考えました。企業は、単に消費者のニーズを満たすためだけではなく、自社の製品やサービスが高級である、あるいは流行しているというイメージを作り出すことによって、消費者の購買意欲を刺激しようとします。
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価格と品質
ヴェブレンは、従来の経済学では価格が需要と供給の関係によってのみ決定されるとされていましたが、現実には必ずしもそうではないことを指摘しました。彼は、顕示的消費が横行する社会では、高価格であること自体が商品の魅力となり、需要を高める要因になり得ると考えました。つまり、企業は、意図的に価格を高く設定することで、自社の製品に高級感や希少性といったイメージを付与し、消費者の購買意欲を刺激することができるのです。