## ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考の選択
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1. 世界はすべて存在する事実である
論考の冒頭、命題1でヴィトゲンシュタインは「世界はすべて存在する事実である」と断言します。これは、世界が事物ではなく、事実から成り立っていることを示しています。彼が言う「事実」とは、物事がどのように存在し、互いにどのように関係しているかという状態を指します。
例えば、「机の上にあるリンゴ」という事実は、リンゴと机という個々の事物に加えて、それらの間の「上にある」という関係を含んでいます。ヴィトゲンシュタインは、世界を理解するということは、このような事実を把握することであると主張します。
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2. 言語は世界の写像である
ヴィトゲンシュタインは、言語と世界の間には密接な関係があると主張します。彼によれば、言語は世界を写し取るための道具であり、その構造は世界の構造を反映しています。
言語の基本的な単位である命題は、世界の事実と対応しており、命題が真であるということは、対応する事実が世界に存在することを意味します。逆に、命題が偽であるということは、対応する事実が世界に存在しないことを意味します。
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3. 言えることと示されること
論考の中でヴィトゲンシュタインは、言語には限界があると指摘します。彼は、倫理、美、宗教など、世界の事実とは直接関係のない事柄については、言語で意味のあることを言えないと主張します。
しかし、だからといってこれらの事柄が無意味であるわけではありません。ヴィトゲンシュタインは、これらの事柄は言語によって示されると考えます。つまり、言語で直接表現することはできないものの、言語を通して間接的に示唆されるものがあるのです。
例えば、倫理的な価値観は言語で定義することはできませんが、私たちの行動や態度を通して示されます。