## ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考のテクスト
世界とは、すべて存在する事実である。
論理哲学論考は、伝統的な哲学の問題の多くが、言語の誤用から生じていると主張することから始まります。ヴィトゲンシュタインは、世界を「事実の総体」と定義し、「物」や「対象」ではなく、「事実」が世界の基本的な構成要素であると主張します。
世界は、事実の総体であって、物の総体ではない。
この主張は、世界の構造に関する従来の考え方に対する根本的な転換を示しています。物自体は、関係性の中で意味を持つのであり、独立して存在するのではない、という視点を提示しています。
事実は、事態の存在と非存在である。
事実とは、ある事態が実際に成立しているかどうかを指します。例えば、「空が青い」という文は、実際に空が青い場合にのみ「事実」となります。
思想は、意味を持つ命題である。
思考は、言語によって表現され、世界と対応関係を持つ命題として理解されます。命題は、事実と同様に、真偽を判定できる構造を持っています。
命題は、現実の論理的描像である。
命題は、現実を映し出す鏡のような役割を果たします。命題の構造は、それが描写する事実の構造と対応しており、この対応関係こそが、命題に意味を与える源泉です。
言語の限界について
論考の後半部分では、倫理、美学、宗教といった問題について論じ、言語の限界を明確にしようと試みます。これらの領域は、事実を描写する言語では捉えきれない、人間の経験の深淵に触れているとされます。
「語りえぬものについては、沈黙しなければならない。」
この有名な言葉は、論考の最後に置かれています。倫理や形而上学といった、言語で表現できない領域について、哲学は沈黙すべきであるという、ヴィトゲンシュタインの思想を象徴的に表しています。
以上が、「論理哲学論考」の主要なテクストの一部です。これらの断片的な言葉は、一見すると難解ですが、言語と世界、思考と現実の関係について、深く考察することを私たちに促しています。