## ワイルドの幸福な王子の話法
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語り手
「幸福な王子」の語り手は三人称全知の語り手です。
語り手は物語の登場人物たちの思考や感情を知っており、それを読者に伝えています。
例えば、ツバメが王子に出会った時の王子の心情について、「王子は自分の下にいる小さなツバメを見て、とても悲しそうにため息をつきました。」と描写しています。
これは、語り手が王子の心の内側を知っていることを示しています。
また、語り手は時折、読者に向けて語りかけるような表現を用いることもあります。
例えば、物語の冒頭で「町の中心に、とても高い柱が立っていて、そのてっぺんに幸福な王子の像がありました。」と語りかけます。
このように、語り手は物語の外側に存在し、客観的な視点から物語を語ると同時に、登場人物の心情や物語の世界観を深く伝え、読者を物語に引き込む役割を担っています。
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比喩表現
ワイルドは「幸福な王子」の中で、様々な比喩表現を用いることで、登場人物の心情や情景を読者に鮮やかに印象づけています。
例えば、王子の像が街を見下ろす場面では、「街はまるで絵本のようでした。」と描写することで、街の美しさを強調しています。
また、ツバメがエジプトへ出発する場面では、「ツバメは、まるで矢のように空を飛んでいきました。」と表現することで、ツバメの速さを際立たせています。
このように、ワイルドは比喩表現を用いることで、単なる描写を超えた、より深みのある表現を実現しています。
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対照
ワイルドは「幸福な王子」の中で、様々な対照を用いることで、テーマをより明確にしています。
例えば、幸福な王子とツバメの関係は、生前人々のために何もできなかった王子と、王子に尽くすことで自己犠牲を学ぶツバメという対照的な関係が描かれています。
また、物語の舞台となる街の華やかさと、その裏に隠された貧困や苦しみの対比も、物語全体を貫く重要な要素となっています。
このように、ワイルドは対照を用いることで、人間の善と悪、美と醜、幸福と不幸といった普遍的なテーマを読者に問いかけています。