ワイルドのドリアン・グレイの肖像の力
美の力
美しさは、作品の中で繰り返し登場するモチーフです。ドリアンは、自分の美しさゆえに、世のあらゆる扉を開くことができると考えています。彼は、その美しさによって、他人を操り、欲しいものを手に入れられることに気づきます。しかし、その美しさは、同時に、彼を虚栄心と自己中心性に導くものでもあります。美しさは一時的なものであり、やがて衰えていくものだということを受け入れられず、ドリアンは自らの魂を肖像画に売り渡す道を選びます。
芸術の力
芸術の力もまた、作中で重要な役割を果たしています。バジル・ホールワードの絵画は、ドリアンの美しさを完璧に捉え、それがドリアンの破滅のきっかけとなります。絵画は、ドリアンの老いと腐敗を代わりに引き受けることで、ドリアンが若さと美しさを保てるようにする力を持つのです。この設定を通して、ワイルドは、芸術が現実を模倣するだけではなく、現実を変える力さえ持ち得ると主張していると言えます。
影響力の力
ヘンリー・ウォートン卿は、ドリアンに退廃的な快楽主義を説く人物であり、彼の言葉は、ドリアンの行動に大きな影響を与えます。ヘンリー卿の思想は、道徳や倫理を軽視し、美と快楽を人生の究極の目標とするものでした。ドリアンは、ヘンリー卿の言葉に感化され、罪悪感を感じることなく、自堕落な生活に身を投じていきます。この関係は、私たちが周囲の人々からいかに影響を受けやすいか、そして、その影響がもたらす結果の大きさを示しています。