ロンブローゾの犯罪人の構成
ロンブローゾの犯罪人類学
チェザレ・ロンブローゾ(1835-1909)は、イタリアの精神科医、大学教授であり、犯罪人類学の創始者として知られています。彼は、犯罪者の生来的特徴、特に身体的特徴に焦点を当て、犯罪は遺伝的に決定されると主張しました。彼の理論は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて大きな影響を与えましたが、今日では科学的に否定されています。
犯罪者の身体的特徴
ロンブローゾは、膨大な数の囚人の身体的特徴を観察し、統計的手法を用いて、彼らが一般人と異なる特徴を持つことを示そうとしました。彼が「生来の犯罪人」(born criminal)と呼んだ犯罪者は、先祖返りによって原始的な段階に退行した存在であり、以下の様な身体的特徴を持つとされました。
* 異常に大きな頭蓋骨または小さな頭蓋骨
* 顔面の非対称
* 大きな耳、低い額、突き出た顎
* 長い腕、短い指、曲がった鼻
* 感覚の鋭敏性の異常
* 入れ墨の多さ
犯罪者の類型
ロンブローゾは、すべての犯罪者が「生来の犯罪人」であるとは考えていませんでした。彼は犯罪者を以下の様に類型化しました。
* **生来の犯罪人:** 生まれつき犯罪傾向を持つ者。上述の身体的特徴を持つ。
* **精神異常者:** 精神疾患のために犯罪を犯す者。
* **情熱的犯罪者:** 愛国心、名誉、恋愛などの強い感情に突き動かされて犯罪を犯す者。
* **機会的犯罪者:** 状況や環境によって犯罪に手を染める者。
ロンブローゾの理論への批判
ロンブローゾの理論は、発表当初から多くの批判にさらされました。主な批判点は以下の通りです。
* **偏ったサンプル:** ロンブローゾの研究対象は、主に刑務所に収監されている囚人に限られており、一般 population を代表するものではない。
* **環境要因の軽視:** 社会的、経済的、文化的要因など、犯罪に影響を与える可能性のある環境要因を軽視している。
* **人種差別的な側面:** ロンブローゾの理論は、特定の人種や民族を犯罪者と結びつける人種差別的な側面を含んでいるとの批判がある。
ロンブローゾの理論は、現代の犯罪学においては科学的に否定されています。しかし、彼の研究は、犯罪の原因を探求する上で、生物学的要因と環境的要因の両方を考慮することの重要性を示唆したという点で、歴史的に重要な意味を持つと言えます。