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ロックの統治二論の批評

## ロックの統治二論の批評

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ロックの自然状態観に対する批判

ロックは自然状態を、「すべての人が完全に自由で、他の人々に従属したり支配されたりすることなく、自然法によってのみ支配されている状態」と定義しました。しかし、この自然状態観に対しては、現実を無視した理想論だという批判があります。

* **現実の人間社会との乖離**: 歴史的に見ても、人間は常に何らかの社会集団を形成しており、完全に自由で平等な状態であったことは一度もありません。ロックの自然状態は、現実の人間社会を無視した抽象的な概念であり、実証性がないという指摘があります。
* **自然法の曖昧さ**: ロックは、自然法を「理性によって知ることができる、神によって定められた普遍的な道徳律」と説明しています。しかし、自然法の内容は解釈によって異なり、客観的な基準を欠いているという批判があります。具体的な法的規則が存在しない自然状態において、自然法のみで人々の権利や自由が守られるのか、という疑問も提起されています。

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所有権論に対する批判

ロックは、労働によって私有財産が発生すると主張しました。しかし、この所有権論に対しても、様々な批判が向けられています。

* **労働価値説の限界**: ロックは、労働を加えることで所有権が発生すると主張していますが、価値の源泉は労働だけではありません。土地や資源など、労働以外の要素も価値に影響を与えていることは明らかです。
* **資源の有限性**: ロックは、世界には十分な資源があると仮定していますが、現実には資源は有限です。すべての人が労働によって所有権を獲得しようとした場合、資源の枯渇や競争が避けられません。
* **不平等の正当化**: ロックの所有権論は、結果として生じる経済的不平等を正当化するものであるという批判があります。労働能力や機会に恵まれた者がより多くの財産を所有することは当然であり、それは自然な権利に基づいていると解釈できるからです。

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抵抗権論に対する批判

ロックは、政府が人々の自然権を侵害した場合、人民には抵抗する権利があると主張しました。しかし、この抵抗権論もまた、以下のような批判に晒されています。

* **抵抗権発動の基準の曖昧**: ロックは、政府の専制が「国民の生命、自由、財産に対する権利の侵害」となる場合に抵抗が正当化されると述べていますが、その判断基準は曖昧です。どのような状況であれば抵抗が正当化されるのか、明確な基準が示されていません。
* **無秩序と不安定化の懸念**: 抵抗権の容認は、社会の無秩序と不安定化を招く可能性があります。抵抗が頻発すれば、政治体制の安定が損なわれ、社会が混乱に陥る可能性も否定できません。

これらの批判は、ロックの統治二論が抱える問題点の一部を示すものです。しかし、これらの批判にもかかわらず、ロックの思想は近代政治思想に多大な影響を与え、現代社会においても重要な議論の対象となっています。

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