ロックの統治二論の思想的背景
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17世紀イングランドの政治状況
ロックの『統治二論』が刊行されたのは1690年ですが、執筆されたのは1680年代とされています。この時期のイングランドは、国王の権力と議会との対立が激化していました。カトリックのジェームズ2世による専制政治や王位継承問題などが、政治的・宗教的な混乱を引き起こしていました。ロック自身も、こうした政治状況に深く関与しており、彼の思想は当時の社会状況を色濃く反映しています。
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自然法思想
ロックは、人間の理性によって認識できる普遍的な道徳法則である「自然法」を重視しました。自然法は、国王の権力をも拘束するものであり、人々の権利を保障する根拠となると考えました。これは、王権神授説に基づき絶対的な権力を主張する国王に対する、明確な批判となっています。
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社会契約説
ロックは、国家が成立する以前は、人々は自然状態にあったと考えていました。自然状態において人々は自由で平等でしたが、権利が保障されていない不安定な状態でもありました。そこで人々は、互いの権利をより確実に保障するために、社会契約によって国家を形成し、政府に統治を委ねたと説明しました。
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抵抗権
社会契約に基づき、政府は人々の権利を保障する義務を負います。もし政府が人々の権利を侵害した場合、人々は抵抗する権利を持つとロックは主張しました。これは、国王の専制を認めないという、当時のイギリスにおける革命思想を正当化する理論的根拠となりました。
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所有権論
ロックは、個人の権利として所有権を重視しました。自然状態において、人は自身の労働によって獲得した財産を所有する権利を持つと主張しました。これは、当時のイギリスにおける商業の発展と、それに伴う新興市民階級の台頭を反映していると考えられます。