## ロックの統治二論の周辺
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執筆の背景
ジョン・ロック(John Locke, 1632-1704)の『統治二論』(Two Treatises of Government)は、1689年に発表されました。この著作は、当時のイングランドで巻き起こっていた名誉革命(Glorious Revolution, 1688年)と深い関わりがあります。名誉革命は、ジェームズ2世の国王としての権力乱用に対する議会側の反乱であり、結果としてジェームズ2世はフランスへ亡命、新たにウィリアム3世とメアリ2世が共同統治者として即位しました。
ロック自身は、名誉革命以前から、絶対王政を批判し、個人の権利を擁護する立場を取っていました。彼は、名誉革命を正当化する理論的根拠を提供するために『統治二論』を執筆したと考えられています。
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統治二論の内容
『統治二論』は、文字通り二つの論文から構成されています。第一論文は、王権神授説を唱えたロバート・フィルマー(Robert Filmer)の『パトリアーチャ』(Patriarcha)に対する批判が展開されています。第二論文では、ロック自身の政治思想の核心が示されます。
ロックは、第二論文において、自然状態における人間の権利として、「生命、自由、財産」を挙げます。そして、政府は、これらの自然権をより確実に保障するために、人々の同意に基づいて設立されると主張しました。また、政府の権力は、人々から委譲されたものに過ぎず、もし政府が人々の権利を侵害するようなことがあれば、人々は抵抗する権利を持つとしました。
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歴史的影響
『統治二論』は、名誉革命の正当化に大きな影響を与えただけでなく、その後の政治思想にも多大な影響を与えました。特に、アメリカ独立宣言(1776年)やフランス人権宣言(1789年)など、18世紀後半に相次いで発表された近代的な憲法や権利宣言に、ロックの思想は色濃く反映されています。
ロックの思想は、現代においても、自由主義、民主主義、人権思想などの基盤の一つとして重要な意味を持ち続けています。