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ロックの寛容についての書簡の構成

ロックの寛容についての書簡の構成

構成

ジョン・ロックの『寛容についての書簡』は、明確な構成を持つ論文であり、その主張を論理的に展開しています。大きく分けて、以下の三部構成を取ることが分かります。

1. **序論:寛容の必要性と定義(第1段落~第5段落)**

ロックはまず、当時の社会状況を背景に、宗教的な寛容の必要性を訴えることから始めます。キリスト教徒同士が些細な教義の違いから対立し、互いに不信と憎悪を募らせている現状を憂い、真のキリスト教精神である愛と慈悲の精神を取り戻す必要性を説きます。

そして、議論の前提として「教会」と「国家」の役割を明確に区別します。ロックにとって教会とは「永遠の生命を得るため」に自発的に形成された宗教共同体を指し、国家とは「市民の財産、所有物、平和をこの世で保障するため」に設立された政治社会を指します。

この区別に基づき、ロックは国家による宗教への干渉を否定し、個人が自らの良心にしたがって信仰を選ぶ自由、すなわち「寛容」を主張します。

2. **寛容の根拠と範囲(第6段落~第46段落)**

この部分では、具体的な論証を通して寛容の正当性と限界を明らかにします。

まず、信仰の強制は無意味であると論じます。なぜなら、真の信仰とは外からの強制ではなく、内なる確信によってのみ成立するからです。国家が力をもって異端を弾圧したり、特定の宗教への改宗を強制しても、それは偽善を生み出すだけで、真の信仰には繋がらないと主張します。

次に、国家が寛容すべき範囲について具体的な事例を挙げながら検討します。カトリック教徒、無神論者、イスラム教徒など、当時のイングランド社会において論争の的となっていた具体的な宗教集団を例に挙げ、それぞれの立場に対する寛容の可否を論じていきます。

寛容の限界については、公共の平和や社会秩序を脅かす行為は許されるべきではないとします。

3. **寛容の重要性と実践(第47段落~末段)**

最後に、改めて寛容の重要性を強調し、実践を呼びかけます。

寛容は単なる理想ではなく、社会の平和と繁栄に不可欠な条件であると主張し、人々が互いの違いを認め合い、理性的な対話を通じて合意形成を目指すことの重要性を説きます。

そして、キリスト教の本来の教えである愛と慈悲の精神に立ち返り、寛容こそが真のキリスト教徒の取るべき道であると結論づけます。

このように、『寛容についての書簡』は、当時の社会状況を背景に、宗教的な寛容の必要性を論じた論文です。ロックは、国家と教会の役割を明確に区別し、個人の自由と理性を尊重する立場から、信仰の自由と寛容の重要性を主張しました。

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