ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の力
ヘレニズム時代研究の画期的な書物
1941年に出版された「ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史」は、古代史、特にヘレニズム時代（紀元前4世紀後半から紀元前1世紀）の研究に革命をもたらした画期的な書物です。
広範な資料の駆使と詳細な分析
ロストフツェフは、碑文、パピルス、貨幣、考古学的発見など、膨大な量の一次資料を駆使し、ヘレニズム世界の社会経済構造を詳細に分析しました。彼の博学さは、従来の政治史中心のヘレニズム時代像を覆し、経済活動、社会構造、文化交流といった側面に光を当てる上で大きな役割を果たしました。
都市と農村、東西交流の重視
ロストフツェフは、ヘレニズム世界を、ギリシャ人入植者によって建設された都市と、既存のオリエント社会の伝統を受け継ぐ農村部からなる複雑な構造体として捉えました。彼は、都市と農村の相互依存関係や、ギリシャ文化とオリエント文化の融合、対立といった側面に着目し、ヘレニズム世界のダイナミズムを鮮やかに描き出しました。
現代社会への洞察
ロストフツェフは、ヘレニズム世界を、グローバリゼーション、文化接触、社会移動といった現代社会にも通じる問題を抱えた時代として捉えました。彼の分析は、現代社会の複雑さを理解する上でも示唆に富むものとして、歴史学の枠を超えて、経済学、社会学、政治学などの分野でも参照されています。