## レーニンの帝国主義論の美
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論理の美
レーニンの『帝国主義論』は、その主張の妥当性をめぐっては現在も議論が続いていますが、マルクスの資本主義分析を土台に、19世紀後半から20世紀初頭の帝国主義の段階における資本主義の特質を、論理的に描き出そうとした点に、一つの美しさを見出すことができます。
レーニンは、資本主義が必然的に生み出す矛盾、すなわち生産力の高度な発展と、それに伴う資本の集中と独占の深化、利潤率の低下傾向、労働者階級の窮乏化といった問題が、帝国主義を生み出す原動力になったと説明しています。
彼は、資本主義が発展するにつれて、国内市場ではもはや十分な利潤を上げることができなくなり、資本は海外へと進出せざるを得なくなると論じます。そして、この資本の輸出が、植民地獲得競争、列強間の対立、ひいては第一次世界大戦のような世界規模の戦争を引き起こすと結論付けています。
このように、レーニンの『帝国主義論』は、複雑な歴史現象を、マルクス主義の唯物史観に基づいて、一貫した論理によって説明しようとする壮大な試みであり、その明快な論理展開自体に一種の美しさを見出すことができます。
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歴史分析の美
レーニンの『帝国主義論』は、膨大な歴史的事実を分析し、それらを理論的に体系化しようとした点においても、美しさを備えています。
レーニンは、当時の世界経済を席巻していた、銀行の独占、企業のカルテルやトラスト formation、資本の輸出、植民地分割といった現象を詳細に分析し、それらが資本主義発展の必然的な帰結であることを論証しようと試みています。
例えば、彼は、19世紀後半にイギリスで銀行が巨大化し、産業資本と融合して金融資本を形成していく過程を、具体的なデータや事例を挙げながら克明に描き出しています。
また、彼は、植民地獲得競争が、単なる領土拡張の欲望ではなく、資本主義経済が内包する矛盾、すなわち過剰資本と過剰生産の解消、原料供給源の確保、市場の拡大といった経済的必然に基づくものであることを、歴史的事実を積み重ねることで明らかにしようと試みています。
このように、レーニンの『帝国主義論』は、単なる理論書ではなく、当時の世界情勢を鋭く分析した優れた歴史書としての側面も持ち合わせており、その緻密な歴史分析は、学問的な美しさを感じさせます。