## レヴィ=ストロースの野生の思考を読む
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著者と作品について
クロード・レヴィ=ストロースは、20世紀を代表するフランスの人類学者であり、思想家です。彼は、民族学研究の手法として「構造主義」を提唱し、未開社会とされる社会の思考様式を分析しました。彼の研究は、従来の人類学の枠組みを超え、哲学、言語学、心理学など幅広い分野に影響を与えました。
1962年に出版された『野生の思考』は、レヴィ=ストロースの代表作の一つであり、彼の構造主義的人類学の集大成とも言える作品です。本書で彼は、未開社会における思考様式を「野生の思考」と名付け、それが西洋の「文明化された思考」と根本的に異なることを主張しました。
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「野生の思考」とは何か
レヴィ=ストロースは、「野生の思考」を、未開社会の人々が、自然界の事物や現象を観察し、その背後に隠された構造や秩序を認識する思考様式であると説明しました。彼は、未開社会の人々が、動物や植物を分類する際に、科学的な知識に基づいて分類しているのではなく、彼ら独自の論理や象徴体系に基づいて分類していると指摘しました。
例えば、本書では、ブラジルの原住民であるボロロ族の神話を取り上げ、彼らが、自然界の様々な要素を、対立する二つのカテゴリーに分類し、その関係性を通して世界を理解しようとしていることを明らかにしています。
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ブリコラージュ
レヴィ=ストロースは、「野生の思考」の特徴の一つとして、「ブリコラージュ」という概念を提唱しました。「ブリコラージュ」とは、限られた素材や道具を使い、状況に応じて柔軟に組み合わせ、新たなものを作り出すことを意味します。
彼は、未開社会の人々が、自然界から得られる限られた資源を最大限に活用し、独自の文化や技術を発達させてきたことを、「ブリコラージュ」の概念を用いて説明しました。
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本書を読む際のポイント
『野生の思考』は、難解なことで知られており、初めて読む人にとっては、理解するのが難しい部分も多いかもしれません。本書を読む際には、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
* **構造主義の基本的な考え方**: レヴィ=ストロースは、人間の思考や文化は、無意識のうちに構造化されているという前提に立っています。彼の主張を理解するためには、まず、構造主義の基本的な考え方を知っておく必要があります。
* **豊富な具体例**: 本書では、世界各地の未開社会の文化や習俗が、豊富な具体例として紹介されています。抽象的な議論を理解するために、これらの具体例をしっかりと押さえておくことが重要です。
* **西洋中心主義からの脱却**: レヴィ=ストロースは、西洋の思考様式を絶対視する西洋中心主義を批判し、未開社会の思考様式にも独自の論理や価値観が存在することを明らかにしようとしました。本書を読む際には、西洋中心的な視点から脱却し、未開社会の文化に対する偏見や先入観を捨てて、彼の主張を読み解いていくことが重要です。