## ルソーの社会契約論の感性
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ルソーにおける感性の位置づけ
ルソーの思想において、「感性」は理性と並んで人間理解の重要な柱となります。理性のみを重視する啓蒙主義思想とは一線を画し、ルソーは人間が本来持つ自然な感情や感覚、すなわち感性を重視しました。彼の哲学体系では、感性は単なる情緒的なものではなく、道徳や社会のあり方を考える上での基礎となると考えられていました。
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「自然状態」と感性
ルソーは「人間は生まれながらにして自由である」という有名な言葉を残しています。これは人間が社会や文化の束縛を受ける以前の「自然状態」において、自己保存の本能と他者への哀れみという二つの自然感情によって導かれていたことを意味します。
自己保存の本能は、自身の生命や安全を確保しようとするエゴイスティックな感情です。一方で、他者への哀れみは、他者の苦痛を理解し共感する、いわば利他的な感情です。ルソーは、自然状態においてはこれらの感情が調和しており、人間は平和に共存していたと考えていました。
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社会形成と感性の変容
しかし、社会が形成され財産や競争が生まれるにつれて、人間の感性は変容していきます。自己保存の本能は所有欲や支配欲へと変質し、他者への哀れみは弱体化していきます。その結果、社会は不平等と対立に満ちたものへと変化していきます。
ルソーはこのような社会状況を改善するために、「社会契約」という概念を提唱しました。それは、個人がそれぞれの自由を「一般意志」に委ねることで、真の自由と平等を実現するという考え方です。
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感性と「一般意志」
ルソーは「一般意志」は単なる多数決ではなく、共同体全体の幸福を目指す共通の意志であると説明しています。そして、この「一般意志」を形成する上で重要な役割を果たすのが感性です。
利己的な欲望を抑え、共同体全体の利益を考慮するためには、感性に基づいた共感や連帯の感情が不可欠となります。ルソーは、感性を通してのみ人間は「一般意志」を理解し、それに従って行動することができると考えていました。
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「社会契約論」における感性の重要性
「社会契約論」において、感性は人間の自然な状態を理解するだけでなく、理想的な社会を実現するための道徳的な指針としても位置づけられています。ルソーは、感性を育み、理性と調和させることで、人間はより良い社会を築けると信じていました。