## ルソーの学問芸術論の話法
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修辞疑問を用いた読者への呼びかけ
ルソーは「学問芸術論」の中で、頻繁に修辞疑問を用いることで、読者へ語りかけるような、あるいは読者を議論に引き込むような話法を用いています。例えば、序論において「学問と芸術は風俗を浄化する傾向にあるだろうか、それとも堕落させる傾向にあるだろうか」と問いかけることで、読者に問題提起をすると同時に、自らの主張へと誘導しています。このような修辞疑問は、読者に考えるきっかけを与え、ルソーの論理展開を追従させる効果を持っています。
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逆説的な表現による論の強調
ルソーは逆説的な表現を効果的に用いることで、自らの主張を強調しています。例えば、「我々の魂は、我々が所有する知識の量に比例して堕落する」という主張は、一般的に知識は善であるとされる常識とは相反するものです。しかし、このような逆説的な表現を用いることで、読者に強い印象を与え、ルソーの主張する「文明社会における知識の弊害」というテーマを際立たせています。
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古代ギリシャ・ローマの引用による権威付け
ルソーは自らの主張を補強するために、古代ギリシャ・ローマの思想家や歴史的事例を頻繁に引用しています。例えば、スパルタの質実剛健さを賞賛し、アテネの堕落を批判することで、学問や芸術が必ずしも社会に良い影響を与えるわけではないことを示唆しています。このような古代の権威の引用は、ルソーの論に説得力を持たせ、読者に対して一定の信頼感を与える役割を果たしています。
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感情に訴えかける描写
ルソーは論理的な説明だけでなく、感情に訴えかける描写を用いることで、読者の共感を誘っています。例えば、文明社会における虚飾や偽善を批判する際に、具体的なエピソードや人物描写を交えながら、生々しく描き出しています。このような感情に訴えかける描写は、読者の心を動かし、ルソーの主張に共感させる効果を持っています。