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ルソーの学問芸術論の技法

## ルソーの学問芸術論の技法

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修辞技法:反語とアイロニー

ルソーは「学問芸術論」の中で、頻繁に反語とアイロニーを用いています。これは、読者の予想を裏切り、一見逆説的な主張をすることで、読者に深く考えさせ、自らの主張を強調する効果を狙ったものです。

例えば、冒頭の「学問と芸術は人間の堕落をもたらしたのかどうか、ディジョンのアカデミーの懸賞論文に応募するために私は問う」という一文は、当時の常識であった「学問と芸術は人間を高尚なものにする」という考え方に真っ向から反対する、挑発的な問いかけとなっています。

また、「人間は生まれながらにして善良である」というルソーの思想と、学問と芸術によって人間が堕落するという主張は、一見矛盾しているように思えます。しかし、ルソーは「自然」と「人工」を対比させることで、人間本来の善良さは「自然」な状態においてのみ存在し、「人工」的な学問や芸術によって歪められてしまうという論理を展開しているのです。このような逆説的な表現を用いることで、ルソーは読者に既存の価値観を疑わせ、自らの主張へと導こうとしているのです。

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歴史的例証の活用

ルソーは自らの主張を裏付けるために、古代ギリシャやローマ、エジプトなど、様々な時代や地域の historical examples を効果的に用いています。これは、単なる抽象的な議論ではなく、具体的な歴史的事実を提示することで、読者に説得力を持たせるための工夫と言えるでしょう。

例えば、古代ギリシャを例に挙げ、学問や芸術が発展した結果、贅沢や怠惰、道徳の退廃を招いたと主張しています。また、スパルタのように質実剛健を旨とする社会の方が、道徳的に優れており、幸福な社会であったと論じています。このように、歴史上の具体的な事例を対比させることで、ルソーは学問と芸術の弊害をより鮮明に浮かび上がらせているのです。

ただし、ルソーの historical examples の扱いは、現代の歴史学の観点から見ると、恣意的であったり、事実関係が正確でない部分も含まれている点は留意が必要です。

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感情に訴えかける表現

ルソーは論理的な思考だけでなく、読者の感情に直接訴えかけるような、情熱的で劇的な表現を用いることも特徴です。これは、読者の共感を呼び起こし、自らの主張に引き込むための効果を狙ったものと考えられます。

例えば、学問や芸術が横行する社会を「偽善と虚栄の支配する世界」と批判したり、「人間は鉄鎖に繋がれていることに気づかずにいる」と嘆いたりするなど、強い言葉で当時の社会状況を糾弾しています。また、自然状態における人間の素朴で純粋な姿を、詩的な表現を用いて美しく描写することで、読者に理想的な人間の在り方をイメージさせているとも言えるでしょう。

このように、ルソーは論理だけでなく、感情面からも読者に訴えかけることで、「学問芸術論」を単なる論文ではなく、文学作品としての側面も持たせていると言えるでしょう。

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