Skip to content Skip to footer

ルソーの孤独な散歩者の夢想の思想的背景

ルソーの孤独な散歩者の夢想の思想的背景

ルソーの晩年と孤独

「孤独な散歩者の夢想」は、ルソーが晩年、パリ近郊やエルムノンヴィルなどで孤独な日々を送る中で執筆した作品です。
1762年、「エミール」と「社会契約論」が出版禁止となり、ルソーは迫害を受けることになります。
この出来事はルソーにとって大きな転機となり、その後は世俗との関わりを絶ち、隠遁生活を送ることを余儀なくされました。
「孤独な散歩者の夢想」は、こうしたルソーの晩年の孤独と、自己の内面への深い思索を反映した作品として知られています。

自然への回帰と自己愛

ルソーは、人間は本来、自然状態においては自由で平等であり、自己愛(amour de soi)という自然な感情によってのみ動かされていたと考えていました。
しかし、社会が形成される過程で、人間は私的所有や競争によって腐敗し、他者を支配しようとする不自然な自己愛(amour-propre)を持つようになったと批判しました。
「孤独な散歩者の夢想」では、自然の中に身を置くことで、こうした社会によって汚染された自己を浄化し、本来の自由で幸福な状態を取り戻そうとするルソーの強い想いが読み取れます。
自然との一体感の中で自己と向き合い、内面の平和と幸福を追求しようとする姿勢は、当時の社会や文明に対する痛烈な批判であると同時に、人間存在の本質に迫る哲学的な問い掛けでもありました。

記憶と夢想による幸福の追求

ルソーは、「孤独な散歩者の夢想」の中で、過去の記憶や夢想の世界に逃避することで、現実の苦悩から逃れ、心の安らぎを得ようとしています。
幸福な子供時代や、かつて愛した人々との思い出は、ルソーにとってかけがえのない心の支えとなっていました。
また、自然の中に身を置きながら夢想にふけることは、ルソーにとって現実の苦しみを忘れ、自己と向き合うための貴重な時間となっていました。
「孤独な散歩者の夢想」は、単に過去の思い出を懐かしむ回想録ではなく、記憶と夢想を通して自己を肯定し、幸福を追求しようとする、ルソーの哲学的な思索が反映された作品といえます。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5