## ルソーの告白の選択
告白という行為の選択
ルソーは、自身の生涯と内面を赤裸々に綴った「告白」を著しました。これは、当時の文学の慣習から大きく逸脱した行為でした。18世紀の自伝は、一般的に社会的に成功した人物が、自身の功績を後世に残すために書かれるものでした。
しかし、ルソーは社会的に成功した人物とは言い難い存在でした。彼は、出自も定まらず、様々な職業を転々とし、人間関係にも問題を抱えていました。彼の著作は、当時の社会規範や道徳観に挑戦するものであり、物議を醸しました。
では、なぜルソーは、このような危険を冒してまで「告白」という形で自身の生涯を世に問うたのでしょうか。彼は、「告白」の中で、次のように述べています。
> 「私は、ひとりの人間を、その本性どおりに、ありのままに、描いてみようと企てたのだ。そして、その人間とは、ほかならぬ私自身である。」
ルソーは、虚飾を排し、ありのままの自分をさらけ出すことで、人間の真実の姿を描写しようとしました。これは、当時の社会が押し付けていた偽善や虚栄に対する、彼の強烈な抵抗と見ることができます。
告白の内容の選択
ルソーは、「告白」の中で、自身の内面を赤裸々に告白しています。彼は、幼少期の性的体験、盗みの罪、恋愛関係の破綻など、通常であれば隠しておきたいと考えるような出来事さえも、包み隠さず描き出しています。
このような告白は、当時の読者に大きな衝撃を与えました。しかし、ルソーは、これらの告白を通して、人間の本質に迫ろうとしました。彼は、人間は善と悪の両方の側面を持つ存在であり、社会的な制約によってのみかろうじてその均衡を保っていると考えていました。
「告白」は、ルソー自身の内面を告白するものであると同時に、人間存在そのものについての深い洞察を与えてくれる作品と言えるでしょう。