## ルソーの告白の思想的背景
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18世紀フランスの社会状況
ルソーが「告白」を執筆した18世紀フランスは、啓蒙主義の時代と呼ばれ、理性に基づいた社会改革が求められていました。
旧体制の矛盾が噴出し、社会は不安定化していました。
絶対王政の下、特権階級は贅沢を謳歌していましたが、第三身分と呼ばれる民衆は貧困と不平等に苦しんでいました。
このような状況下で、ルソーは人間の自然な善良さと社会制度の腐敗を対比させ、人間性の回復と社会の変革を訴えました。
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啓蒙主義の影響
ルソーは、啓蒙主義の代表的な思想家であるモンテスキュー、ヴォルテール、ディドロらの影響を受けました。
彼らは、理性に基づいた社会改革を訴え、人間の自由と平等、そして寛容の精神を重視しました。
ルソーもまた、人間の理性と自然な権利を信じていましたが、一方で、文明社会における理性の一面的発展が、かえって人間性を喪失させると批判しました。
彼は「人間は生まれながらにして自由である。ところが、いたるところで人間は鉄鎖につながれている」という有名な言葉を残しています。
これは、社会制度や慣習が人間の自由を奪っていると批判したものであり、啓蒙主義の理想と現実の矛盾を鋭く指摘したものでした。
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ルソーの思想
ルソーは、「人間は生まれながらにして善良である」という性善説を唱えました。
彼は、自然状態における人間は、自己愛(amour de soi)と憐れみ(pitié)という2つの自然感情によって支配され、他者を傷つけることなく平和に共存できると考えました。
しかし、社会契約によって形成された文明社会においては、私有財産の発生や社会的不平等によって、人間の心に虚栄心や嫉妬心などの不自然な感情が生じ、それが紛争や不幸の原因となるとしました。
ルソーは、「告白」の中で、自身の半生を振り返りつつ、社会生活における人間関係の難しさや、自らの犯した過ち、心の葛藤などを赤裸々に描いています。
彼は、自分の弱さや醜さを隠すことなく告白することで、人間の本性に迫ろうとしました。
「告白」は、単なる個人的な回顧録ではなく、人間の自由と道徳、そして社会のあり方について深く考察した哲学的な作品と言えるでしょう。