## リースマンの孤独な大衆を読む
1950年に出版されたデビッド・リースマンの著書「孤独な群衆」は、アメリカ社会における社会規範の変化を分析し、大きな反響を呼びました。リースマンは、歴史的な変化とともに人間の性格構造がどのように変化してきたのかを、伝統指向型、内部指向型、他人指向型という3つの類型を用いて説明しました。
伝統指向型社会における性格
リースマンは、伝統的な社会においては人々の行動が慣習や伝統によって強く規定されていると指摘します。人々は、親や祖先から受け継いだ価値観や行動規範に従って生活し、社会における自分の役割や地位もあらかじめ決められています。このような社会では、個人が集団から逸脱することは許されず、集団への同調が求められます。
内部指向型社会への移行
産業革命以降、西洋社会は伝統的な社会構造から近代社会へと変貌を遂げました。都市化や工業化が進展する中で、人々は生まれ育った土地を離れて新しい環境で生活するようになり、伝統的な価値観や行動規範は相対化されていきました。このような社会では、個人が自身の内面的な価値観や信念に基づいて行動することが求められ、自己規律と勤勉さが重要視されます。
他人指向型社会の台頭
リースマンは、20世紀半ばのアメリカ社会において、他人指向型の性格構造を持つ人々が増加していると指摘しました。大量消費社会の出現やマスメディアの発達に伴い、人々は周囲の人々の意見や流行に敏感になり、他者からの承認を求める傾向が強まりました。他人指向型の人々は、状況に合わせて自分の態度や行動を柔軟に変え、周囲との調和を重視します。
「孤独な群衆」というパラドックス
リースマンは、他人指向型社会においては、人々は周囲の人々と常に繋がりを求めながらも、実際には孤独感を抱えやすいと指摘しました。他者からの承認を過度に気にするあまり、自分自身の価値観や信念を見失い、空虚な人間関係に陥ってしまう可能性も孕んでいます。
「孤独な群衆」は、社会学や心理学の分野に大きな影響を与え、現代社会を理解するための重要な視点を提供しています。リースマンの分析は、現代社会における人間関係の複雑さや、自己実現の難しさについて考えさせてくれます。