リースマンの孤独な大衆の普遍性
リースマンの「伝統指向型」「内部指向型」「他人指向型」
デヴィッド・リースマンは、1950年に出版された著書「孤独な大衆」の中で、社会の近代化に伴い、人間の性格構造が「伝統指向型」から「内部指向型」を経て「他人指向型」へと変化していくと主張しました。
* **伝統指向型**は、伝統や慣習を重視し、集団への所属意識が強い性格構造です。
* **内部指向型**は、自分の価値観や信念に基づいて行動する、自律的な性格構造です。
* **他人指向型**は、周囲の人々の期待や評価を気にして行動する、同調的な性格構造です。
リースマンは、伝統社会から近代社会への移行期には、内部指向型の人間が増加すると考えました。しかし、高度に発達した消費社会においては、人々はマスメディアや広告の影響を強く受け、他者の視線を過剰に気にするようになり、他人指向型の人間が支配的になると指摘しました。
「孤独な大衆」の現代社会における妥当性
「孤独な大衆」は、出版から半世紀以上が経過した現在においても、現代社会を鋭く分析した古典として読み継がれています。特に、ソーシャルメディアの普及により、人々のコミュニケーション様式や自己認識が大きく変化している現代において、リースマンの洞察は再び注目を集めています。
ソーシャルメディア上では、人々は「いいね!」やフォロワー数といった数値化された指標によって評価され、他者の視線を過剰に意識する傾向が見られます。また、フィルターをかけられた理想的な自己イメージを演出し、承認欲求を満たそうとする行動も散見されます。これらの現象は、リースマンが指摘した「他人指向型」の特徴と重なる部分が多く、現代社会における「孤独な大衆」の存在を裏付けていると言えるかもしれません。
「孤独な大衆」への批判
一方で、「孤独な大衆」に対する批判も存在します。例えば、リースマンの性格類型論は、あまりにも単純化されており、人間の複雑さを捉えきれていないという指摘があります。また、他人指向型をネガティブに捉えすぎているという意見もあります。
さらに、現代社会においては、ソーシャルメディアを通じて新しいコミュニティが形成されたり、個人が自由に情報発信を行ったりするなど、リースマンの時代には想定されていなかった現象も起きています。