ラートブルフの法哲学の主題
法の三つの側面
ラートブルフは、法を理解するためには、法が「理念」・「秩序」・「現実」という三つの側面を持つことを認識することが重要であるとしました。
**法の理念:** 法の理念とは、正義や道徳といった法の根底にある価値観を指します。ラートブルフは、法の理念として「正義」「法的安定性」「目的適合性」の三つを挙げ、これらは互いに緊張関係にありながらも、法を構成する上で不可欠な要素であるとしました。
**法の秩序:** 法の秩序とは、具体的な法規範や判例、慣習法など、社会において法として成立している秩序を指します。ラートブルフは、法の秩序は法の理念を実現するための手段であるとしつつも、秩序そのものが目的化してしまうことで、法の理念が軽視される危険性を指摘しました。
**法の現実:** 法の現実は、法が社会の中でどのように機能し、人々の行動にどのような影響を与えているのかという、法の現実的な側面を指します。ラートブルフは、法の理念や秩序は、現実の人間生活の中で機能してこそ意味を持つとし、法の現実を軽視した形式的な法の運用を批判しました。
相対主義の克服
ラートブルフは、法の三つの側面を統合的に捉えることで、ナチス政権下で見られたような、法の形式性や国家権力に盲従する「法実証主義」の危険性を克服しようとしました。
ラートブルフは、法の理念と秩序が完全に一致することはなく、常に緊張関係にあることを認めながらも、法の理念を指針とすることで、法秩序の形式性や恣意性を抑制できると考えました。また、法の現実を直視することで、法の理念と秩序が社会の中でどのように機能しているのかを評価し、法の改善につなげることができるとしました。
ラートブルフは、法の三つの側面を統合的に捉えることで、法の相対主義を克服し、真に正義を実現する道を探求しようとしました。